2026年10月7日水曜日

離婚前の貯金や相続財産は、離婚時に半分にしなければならない?

 前回記事からの続編です。財産分与について相談を受けていると、

「財産分与は原則2分の1と聞きましたが、結婚前から貯めていた預金も半分にしなければならないのでしょうか」

「親から相続した財産も、離婚すると相手に分けなければならないのでしょうか」

という質問を受けることがあります。


財産分与の対象となるのは、基本的には、夫婦が婚姻中に協力して形成・維持した財産です。

そのため、結婚する前から持っていた預貯金や不動産、婚姻中であっても親などから相続・贈与によって取得した財産については、原則として財産分与の対象にはなりません。


このような財産を「特有財産」と呼びます。


もっとも、実際の財産分与では、「これは結婚前のお金です」「親からもらったお金です」と説明するだけで簡単に解決するとは限りません。

例えば、結婚時に500万円の預金があったものの、その後20年間、同じ口座に給与が振り込まれ、生活費が引き出され、入出金を繰り返していた場合、その口座に現在残っている預金のうち、どの部分が結婚前からの財産なのかが問題になることがあります。

また、親から相続した預金を使って自宅を購入した場合などにも、相続したお金が実際に自宅の購入資金として使われたことを確認する必要があります。


そのため、特有財産が問題になる場合には、「何を持っていたか」だけでなく、その財産が現在の財産にどのようにつながっているかを確認することが重要です。

結婚当時の預金通帳や取引履歴、相続時の遺産分割協議書、預金の振込記録、贈与に関する資料などが重要な資料になることがあります。

特に、婚姻期間が長くなると、昔の通帳や取引履歴を取得することが難しくなる場合があります。

「結婚前から自分のお金があった」「親から相続したお金を使った」という事情がある場合には、離婚の話が具体化する前から、手元に残っている資料を確認しておき、説明ができる状態にしておく必要があります。


財産分与は、単純に夫婦それぞれの名義の財産を全部足して2分の1にすればよいというものではありません。

特有財産がある場合には、財産が形成された経緯や、それを裏付ける資料まで確認して検討する必要があります。

特有財産をめぐる争いでは、手元の資料だけでなく、必要に応じて裁判所の調査嘱託なども利用しながら、過去の資金の流れを丁寧にたどって立証していくことが重要であり、まさに弁護士の経験と工夫が求められる場面ですので、特有財産が問題になりそうな場合には、ご自身だけで判断せず、ぜひ早い段階で弁護士にご相談ください

弁護士 市川哲宏

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